西井クリニック

『膝痛 こだわりの保存治療』
医学書です。
整形内科研究会でお世話になっている谷掛洋平先生@エコーサムライの紹介です。
読むまえは、『整形外科専門医の本でむずかしいんじゃないの?』とかおもってたんですがそうでもなかったです。
これは著者の宗田大先生のわかりやすい文章のおかげとおもいます。
膝痛をきたす変形性膝関節症(膝OA)ですが、レントゲンでも異常があっても痛みを感じない人のほうが多いとのことです。
現状、膝OAはTKAという手術でいえば、『膝痛の100人に1人しか人工膝関節手術をうけていない』とのことです。
つまり残りの人は、保存的治療となっているとのことです。
膝痛の原因をかんがえるうえで、関節内痛(軟骨摩耗)と関節外痛(線維痛)に分けて治療するとのことです。
手術するかどうかの鑑別方法のひとつとして『リドカインテスト』を紹介されています。
とうぜん、『レントゲンは意味がない』というわけでなくて、病歴や身体所見をふくめて総合的に判断するべきとのことです。
保存的治療としては、『痛点ストレッチ』を紹介されていました。
いわゆる徒手療法になるとおもいます。
ヒアルロン酸関節内注射についてもかいてありましたが、おもしろかったのは『関節外に注射しても効く』とはっきり書かれていることです。
いわゆるファシアリリースの効果をみとめておられます。
東京医科歯科大学でも膝蓋下脂肪体の線維化を研究されているのを紹介されていました。
宗田先生流膝痛の保存治療がいっぱいつまっているという感じで勉強になりました。
どの領域にもいえることですが、整形外科手術が意味ないというわけで絶対ないですね。
適切な診療をして、近隣の整形外科専門医と連携をとるのが重要とおもいました。

一般書です。
子育て本も健康コーナーの本と同じような様相を呈していますが、これもかなりよかったです。
著者は慶応大学小児科教授の高橋孝雄先生。
こどもが『勉強できるようになること』、『運動できるようになること』よりも大事なこと3つ。
親は、以下の3つを育むサポートをするべきとのことです。

『共感力』
『意思決定力』
『自己肯定感』

詳細は第3章にかいてありますが、なるほどそのとおりかもしれません。
トンビがタカを産むことはないと言い切られています。
トンビはトンビを産むし、タカはタカを産む。
ヒバリはヒバリを産むし、スズメはスズメをうみます。
能力、才能はあるていどの遺伝と環境に依存するとのことです。
ただし、どんな子供でもキラリと光る物をもっているはずで、親はそれを見逃してはならないといわれます。

早期教育には意味がない。
こどもの成績がいいか、悪いかは『おしっこが薄いか、濃ゆいか』くらいの意味しかない。
食べ物で頭がよくなることはない。
『添加物ガー』とか『糖質ガー』とかいってがんばるのはいいけど、険悪になっては食事もおいしくないですね。

冷静に考えればそのとおりだなとおもいますが、意外にふりまわされてしまうものです。
この本の前半は『もっと気楽にやろうよ』といってくれます。
最終章では高橋教授がであったこどもたちの紹介があり、けっこうホロリとさせてくれます。
気楽に読めるので、子育てでつかれたお父さん、お母さんはよまれてはどうでしょうか。

9/17(日)は朝から次世代の食事健康療法勉強会に参加してきました。

糖尿病の治療食としての糖質制限があって、Facebookなどでひろがりをみせてきました。

しかしシビアな糖質制限をすることで不都合な状態になる人もいます。

糖質制限のメリット、デメリットをかんがえ、各人が今後どうするか?といったテーマでした。

プレゼンテーターは6名おられましたが、全員が糖質制限を全肯定するでもなく、全否定するでもないのがよかったです。

歯科医の篠原先生はケトジェニック卒業宣言されていました。

藤本さんは自らの闘病記と考古学からの古代人の食性をおしえていただきました。

ビジーなスライドだったのですが、はなしが上手で頭に入りやすかったです。

先日の岩田教授のプレゼンでもそうだったのですが、やはりパワポのスライドより話し方が大事なのだとおもいました。

吉田さんは糖質リハビリのまとめをプレゼンしてくださいました。

こちらも本家池澤先生の説明よりわかりやすいスライドでよかったです。

田頭先生は糖質制限肯定派です。

『事実』と『解釈』から糖質制限を考察するという、哲学チックなはなしでした。

福田先生は腎臓内科医からみた糖質制限のメリット、デメリットという内容でした。

鈴木先生も自身が糖質制限から脂質制限にかわった経緯をおしえていただきました。

有酸素運動より、筋トレがだいじとのことです。

医師を含めた医療従事者から患者さんまでが参加されていましたが全員が勉強になった、満足したとおもわれたのでないでしょうか。

会費2000円でこの内容の勉強会を開催するのはちょっと考えられないとおもいます。

主催の藤本さん、篠原先生はじめ講師の先生方ありがとうございました。

9/16(土)は昼からプライマリケア学会秋季生涯教育セミナーに参加しました。

一コマ目は岩田健太郎教授(神戸大学感染症内科)のゲシュタルト診断のはなし。

ケアネットのDVDでは見たことあったし、著書もファンなのでよく読んだのですが、生講義ははじめてでした。

スライドを一切使用せずのプレゼンでした。

Deduction、induction、abductionなど哲学的なはなしがつづき、興味深かったです。

二コマ目は林寛之教授(福井大学総合診療科)のプライマリケアと心電図のはなし。

わかっているつもりでしたが、あやふやなところや、知らなかったところが結構あって勉強になりました。

これもアップデートする必要があるとおもいました。

一般書です。
書店ではいわゆる家庭医学コーナーなるものがあって、いろいろ売られています。
なかにはアヤシイものもあるのですが、この本はかなりよかったです。
著者は早稲田大学のオリンピックドクターである金岡恒治先生。
腰痛で病院を受診するひとはおおいですが、85%のひとは原因がわからないとのことです。
ほとんどの腰痛患者は症状が改善されず治療に満足されていません。
著者は、アスリートの腰痛予防の研究、パフォーマンス向上を研究されています。
腰痛患者さんは共通して、腰まわりの筋肉がうまくつかえていないとのことです。
本書では『腰痛の誘発テスト』で4つのタイプに分類しています。
そのうえで、それぞれのタイプ別のエクササイズを紹介されています。
腰が痛かったときに、腰部にコルセットや腰痛ベルトをまいて、症状が緩和された経験をもつひともいるとおもいます。
本来、このコルセットの役割をする筋肉(コルセット筋)をきたえようとするものです。
われわれ医療従事者が言うところの『セルフケア』をうながしておられます。
ぼくも日常診療で腰痛の患者さんに、注射や鍼をしていますが、同じくらいかそれ以上に『セルフケア』は重要と思います。
日常生活の中でも、腰痛をおこさないようにするアドバイスももりこまれています。
医療従事者のかたにも、患者指導の方法として参考になることがおおいとおもいます。
腰痛でない人も、将来の腰痛予防にこの本で紹介されているエクササイズをちょっとやってみてはどうでしょうか?